GUIDE 08

相関分析と回帰分析:ピアソンのr、スピアマンのρ、傾きの解釈

ピアソンの相関係数とスピアマンの順位相関の違い、決定係数r²、回帰の傾きの解釈、相関と因果の区別、外れ値の影響を手計算の例題で説明します。

2つの変数が一緒に動くかどうかを知りたいとき、最初に使う道具が相関分析と回帰分析です。2つは計算の過程が多く重なりますが、問いが異なります。相関は「2つの変数がどれだけ強く一緒に動くか」を、回帰は「xが1単位変わるとyが平均的にどれだけ変わるか」を問います。

ピアソンの相関係数r

ピアソンのrは、2つの連続変数の線形関係の強さと向きを−1から1の間の値で表します。

  • r = Sxy / √(Sxx × Syy)
  • Sxy = Σ(x−x̄)(y−ȳ)Sxx = Σ(x−x̄)²Syy = Σ(y−ȳ)²

rが1に近ければ強い正の線形関係、−1に近ければ強い負の線形関係、0に近ければ線形関係が弱いという意味です。強さの基準は分野によって異なりますが、絶対値0.1・0.3・0.5を弱い・中程度・強いとみなす慣例がよく使われます。

rが0に近いからといって関係がないわけではありません。y = x²のようなはっきりした曲線関係でも、rは0付近になることがあります。そのため、相関係数を計算する前に必ず散布図を見ます。

スピアマンの順位相関ρ

スピアマンのρは、元の値を順位に置き換えてからピアソンのrを計算したものです。同順位がない場合は、次の簡単な式と一致します。

  • ρ = 1 − 6Σd² / (n(n²−1))(dは各ペアの順位の差)

スピアマンのρは、直線でなくても一方向に一貫して増加または減少する(単調な)関係をとらえ、外れ値の影響を受けにくい指標です。順序型のデータ(満足度の順位など)にも使えます。

例題:勉強時間と点数

学生6人の勉強時間(x、時間)と点数(y)です。

学生xyx−x̄y−ȳ(x−x̄)(y−ȳ)
1152−2.5−9.66724.167
2255−1.5−6.66710.000
3361−0.5−0.6670.333
44600.5−1.667−0.833
55681.56.3339.500
66742.512.33330.833

ステップ1:平均

x̄ = 21 / 6 = 3.5ȳ = 370 / 6 ≈ 61.667

ステップ2:平方和と積和

  • Sxy = 24.167 + 10.000 + 0.333 − 0.833 + 9.500 + 30.833 = 74
  • Sxx = 6.25 + 2.25 + 0.25 + 0.25 + 2.25 + 6.25 = 17.5
  • Syy ≈ 333.333

ステップ3:ピアソンのr

r = 74 / √(17.5 × 333.333) = 74 / √5833.33 ≈ 74 / 76.376 ≈ 0.9689

非常に強い正の線形関係です。このrについての検定(帰無仮説ρ=0、自由度4)の両側p値は約0.0014です。

ステップ4:スピアマンのρ

xの順位は1〜6のままで、yの順位は1, 2, 4, 3, 5, 6です(60は61より小さいので、学生3・4の順位が入れ替わります)。順位の差dは0, 0, −1, 1, 0, 0で、Σd² = 2です。

ρ = 1 − 6 × 2 / (6 × (36 − 1)) = 1 − 12 / 210 ≈ 0.9429

ステップ5:回帰直線

  • 傾き:b = Sxy / Sxx = 74 / 17.5 ≈ 4.2286
  • 切片:a = ȳ − b × x̄ = 61.667 − 4.2286 × 3.5 ≈ 46.867
  • 回帰式:ŷ ≈ 46.867 + 4.2286x

傾きとr²の解釈

  • 傾き4.2286:勉強時間が1時間多い学生は、点数が平均して約4.23点高いと予測されるという意味です。傾きは単位のある値(点/時間)なので、xやyの単位を変えると傾きも変わります。一方、rには単位がありません。
  • 切片46.867:x=0のときの予測値です。ここではまったく勉強しなかった場合ですが、データにx=0がないので観測範囲外への外挿となり、解釈には注意が必要です。
  • 決定係数r² ≈ 0.9387:点数の全変動のうち約93.9%が、勉強時間との線形関係で説明されるという意味です。単回帰では、r²はピアソンのrの2乗と等しくなります。

傾きとrの符号は常に同じで、b = r × (s_y / s_x)という関係があります。つまりrが同じでも、yの散らばりが大きければ傾きは大きくなります。

外れ値の影響

上のデータに学生を1人追加してみます。勉強時間は7時間なのに点数は30点です(試験当日に体調を崩したとしましょう)。

区分元の6人外れ値を含む7人
ピアソンのr約0.9689約−0.1149
スピアマンのρ約0.9429約0.2143

点1つでピアソンのrの符号まで変わりました。ピアソンのrは平均と偏差の2乗を使うので、xとyの両方で極端な位置にある点1つが結果を左右しかねません。スピアマンのρも影響を受けましたが、順位を使うので変化の幅は比較的小さくなっています。こうした理由から、次の手順を勧めます。

  1. 散布図で外れ値と曲線関係をまず確認します。
  2. 外れ値が入力ミスなのか実際の値なのかを確認します。
  3. 実際の値であれば、外れ値を含めた結果と除いた結果の両方を報告するか、スピアマンのρもあわせて示します。

相関は因果ではありません

強い相関があっても、xがyの原因だとは言えません。よくある理由は次のとおりです。

  • 第3の変数(交絡変数):アイスクリームの売上と水難事故は一緒に増えますが、どちらも気温が原因です。
  • 逆の因果:運動量の多い人が健康なのか、健康な人がより運動するのか、相関だけでは区別できません。
  • 偶然:変数の組を大量に調べると、関係のない変数どうしでも強い相関が偶然現れます。
  • 選択バイアス:特定の条件を満たす人だけが標本に入ると、なかった相関が生じたり、あった相関が消えたりします。

因果を主張するには、無作為割り付けによる実験や、交絡変数を体系的に統制した研究デザインが必要です。回帰分析の傾きも同様に、「xを変えるとyが変わる」ではなく「xが異なる対象の間で、yが平均的にこれだけ異なる」と解釈するのが安全です。

どれを使うか

状況推奨
2つの連続変数、直線関係、外れ値なしピアソンのr
単調だが曲線的な関係、外れ値あり、順序型データスピアマンのρ
xでyを予測したい、変化量を知りたい単回帰分析(傾き・切片・r²)

このサイトの相関・回帰計算機にx、yのペアを貼り付けると、ピアソンのr、スピアマンのρ、回帰式、r²を一度に確認できます。

まとめ

  • ピアソンのrは線形関係の強さ、スピアマンのρは順位に基づく単調な関係の強さを表します。
  • 例題の6ペアでは、r ≈ 0.9689、ρ ≈ 0.9429、回帰式ŷ ≈ 46.867 + 4.2286x、r² ≈ 0.9387です。
  • 傾きはx 1単位あたりのyの平均変化量(単位あり)、r²はyの変動のうち線形関係で説明される割合です。
  • 外れ値1点でピアソンのrが0.9689から−0.1149に変わりうるので、まず散布図を見ます。
  • 相関や回帰の傾きは、因果を証明しません。

→ 計算機ですぐに計算: 相関・回帰

更新日 2026-09-23