2つの変数が一緒に動くかどうかを知りたいとき、最初に使う道具が相関分析と回帰分析です。2つは計算の過程が多く重なりますが、問いが異なります。相関は「2つの変数がどれだけ強く一緒に動くか」を、回帰は「xが1単位変わるとyが平均的にどれだけ変わるか」を問います。
ピアソンの相関係数r
ピアソンのrは、2つの連続変数の線形関係の強さと向きを−1から1の間の値で表します。
r = Sxy / √(Sxx × Syy)Sxy = Σ(x−x̄)(y−ȳ)、Sxx = Σ(x−x̄)²、Syy = Σ(y−ȳ)²
rが1に近ければ強い正の線形関係、−1に近ければ強い負の線形関係、0に近ければ線形関係が弱いという意味です。強さの基準は分野によって異なりますが、絶対値0.1・0.3・0.5を弱い・中程度・強いとみなす慣例がよく使われます。
rが0に近いからといって関係がないわけではありません。y = x²のようなはっきりした曲線関係でも、rは0付近になることがあります。そのため、相関係数を計算する前に必ず散布図を見ます。
スピアマンの順位相関ρ
スピアマンのρは、元の値を順位に置き換えてからピアソンのrを計算したものです。同順位がない場合は、次の簡単な式と一致します。
ρ = 1 − 6Σd² / (n(n²−1))(dは各ペアの順位の差)
スピアマンのρは、直線でなくても一方向に一貫して増加または減少する(単調な)関係をとらえ、外れ値の影響を受けにくい指標です。順序型のデータ(満足度の順位など)にも使えます。
例題:勉強時間と点数
学生6人の勉強時間(x、時間)と点数(y)です。
| 学生 | x | y | x−x̄ | y−ȳ | (x−x̄)(y−ȳ) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 52 | −2.5 | −9.667 | 24.167 |
| 2 | 2 | 55 | −1.5 | −6.667 | 10.000 |
| 3 | 3 | 61 | −0.5 | −0.667 | 0.333 |
| 4 | 4 | 60 | 0.5 | −1.667 | −0.833 |
| 5 | 5 | 68 | 1.5 | 6.333 | 9.500 |
| 6 | 6 | 74 | 2.5 | 12.333 | 30.833 |
ステップ1:平均
x̄ = 21 / 6 = 3.5、ȳ = 370 / 6 ≈ 61.667
ステップ2:平方和と積和
Sxy = 24.167 + 10.000 + 0.333 − 0.833 + 9.500 + 30.833 = 74Sxx = 6.25 + 2.25 + 0.25 + 0.25 + 2.25 + 6.25 = 17.5Syy ≈ 333.333
ステップ3:ピアソンのr
r = 74 / √(17.5 × 333.333) = 74 / √5833.33 ≈ 74 / 76.376 ≈ 0.9689
非常に強い正の線形関係です。このrについての検定(帰無仮説ρ=0、自由度4)の両側p値は約0.0014です。
ステップ4:スピアマンのρ
xの順位は1〜6のままで、yの順位は1, 2, 4, 3, 5, 6です(60は61より小さいので、学生3・4の順位が入れ替わります)。順位の差dは0, 0, −1, 1, 0, 0で、Σd² = 2です。
ρ = 1 − 6 × 2 / (6 × (36 − 1)) = 1 − 12 / 210 ≈ 0.9429
ステップ5:回帰直線
- 傾き:
b = Sxy / Sxx = 74 / 17.5 ≈ 4.2286 - 切片:
a = ȳ − b × x̄ = 61.667 − 4.2286 × 3.5 ≈ 46.867 - 回帰式:
ŷ ≈ 46.867 + 4.2286x
傾きとr²の解釈
- 傾き4.2286:勉強時間が1時間多い学生は、点数が平均して約4.23点高いと予測されるという意味です。傾きは単位のある値(点/時間)なので、xやyの単位を変えると傾きも変わります。一方、rには単位がありません。
- 切片46.867:x=0のときの予測値です。ここではまったく勉強しなかった場合ですが、データにx=0がないので観測範囲外への外挿となり、解釈には注意が必要です。
- 決定係数r² ≈ 0.9387:点数の全変動のうち約93.9%が、勉強時間との線形関係で説明されるという意味です。単回帰では、r²はピアソンのrの2乗と等しくなります。
傾きとrの符号は常に同じで、b = r × (s_y / s_x)という関係があります。つまりrが同じでも、yの散らばりが大きければ傾きは大きくなります。
外れ値の影響
上のデータに学生を1人追加してみます。勉強時間は7時間なのに点数は30点です(試験当日に体調を崩したとしましょう)。
| 区分 | 元の6人 | 外れ値を含む7人 |
|---|---|---|
| ピアソンのr | 約0.9689 | 約−0.1149 |
| スピアマンのρ | 約0.9429 | 約0.2143 |
点1つでピアソンのrの符号まで変わりました。ピアソンのrは平均と偏差の2乗を使うので、xとyの両方で極端な位置にある点1つが結果を左右しかねません。スピアマンのρも影響を受けましたが、順位を使うので変化の幅は比較的小さくなっています。こうした理由から、次の手順を勧めます。
- 散布図で外れ値と曲線関係をまず確認します。
- 外れ値が入力ミスなのか実際の値なのかを確認します。
- 実際の値であれば、外れ値を含めた結果と除いた結果の両方を報告するか、スピアマンのρもあわせて示します。
相関は因果ではありません
強い相関があっても、xがyの原因だとは言えません。よくある理由は次のとおりです。
- 第3の変数(交絡変数):アイスクリームの売上と水難事故は一緒に増えますが、どちらも気温が原因です。
- 逆の因果:運動量の多い人が健康なのか、健康な人がより運動するのか、相関だけでは区別できません。
- 偶然:変数の組を大量に調べると、関係のない変数どうしでも強い相関が偶然現れます。
- 選択バイアス:特定の条件を満たす人だけが標本に入ると、なかった相関が生じたり、あった相関が消えたりします。
因果を主張するには、無作為割り付けによる実験や、交絡変数を体系的に統制した研究デザインが必要です。回帰分析の傾きも同様に、「xを変えるとyが変わる」ではなく「xが異なる対象の間で、yが平均的にこれだけ異なる」と解釈するのが安全です。
どれを使うか
| 状況 | 推奨 |
|---|---|
| 2つの連続変数、直線関係、外れ値なし | ピアソンのr |
| 単調だが曲線的な関係、外れ値あり、順序型データ | スピアマンのρ |
| xでyを予測したい、変化量を知りたい | 単回帰分析(傾き・切片・r²) |
このサイトの相関・回帰計算機にx、yのペアを貼り付けると、ピアソンのr、スピアマンのρ、回帰式、r²を一度に確認できます。
まとめ
- ピアソンのrは線形関係の強さ、スピアマンのρは順位に基づく単調な関係の強さを表します。
- 例題の6ペアでは、r ≈ 0.9689、ρ ≈ 0.9429、回帰式
ŷ ≈ 46.867 + 4.2286x、r² ≈ 0.9387です。 - 傾きはx 1単位あたりのyの平均変化量(単位あり)、r²はyの変動のうち線形関係で説明される割合です。
- 外れ値1点でピアソンのrが0.9689から−0.1149に変わりうるので、まず散布図を見ます。
- 相関や回帰の傾きは、因果を証明しません。