GUIDE 03

正規分布とz得点:累積確率と上位x%の点数を求める

正規分布の性質、z得点による標準化、68–95–99.7ルール、累積確率の読み方と上位10%の基準点の逆算を段階的な例題で説明します。

正規分布は、平均を中心に左右対称な釣鐘型の分布です。身長、測定誤差、多くの試験の点数のように、たくさんの小さな要因が足し合わされてできる値は、正規分布に近い形になることが多くあります。また、標本平均は標本が十分大きければ元の分布に関係なく正規分布に近づきます(中心極限定理)。このおかげで、信頼区間や検定の多くが正規分布をもとに作られています。

正規分布を決める2つの値

正規分布は平均 μ標準偏差 σの2つの値で完全に決まります。記号ではN(μ, σ²)のように書きます(2番目は分散です)。

  • μは釣鐘の中心の位置を決めます。
  • σは釣鐘の幅を決めます。σが大きければ低く広く、小さければ高く狭く広がります。
  • 平均、中央値、最頻値はすべてμで一致します。
  • 曲線の下の面積全体は1で、ある区間の面積がその区間に値が入る確率です。

z得点:異なる尺度を1つに

z得点は、ある値が平均から標準偏差いくつ分離れているかを表します。

  • z = (x − μ) / σ

z得点に変換すると、あらゆる正規分布が平均0、標準偏差1の標準正規分布N(0, 1)になります。そのため、1つの表(または1つの計算機)ですべての正規分布の確率を求められます。z得点には単位がないので、尺度の異なる2つの試験の成績を比べるときにも役立ちます。たとえば平均70・標準偏差10の試験の85点(z=1.5)は、平均60・標準偏差20の試験の80点(z=1.0)より相対的に高い成績です。

68–95–99.7ルール

標準偏差の単位で区間をとると、正規分布の中に入る割合は常に同じです。

区間入る割合(正確な値)外側の割合
μ ± 1σ約68.27%約31.73%
μ ± 2σ約95.45%約4.55%
μ ± 3σ約99.73%約0.27%

このルールは暗算用の近似です。ちょうど95%を含む区間は±2σではなく±1.96σで、信頼区間に1.96という数字が出てくる理由はこれです。同様に90%は±1.645σ、99%は±2.576σです。

累積確率の読み方

正規分布の計算で最も基本となる値は累積確率P(X ≤ x)、つまりx以下になる確率です。標準正規分布ではΦ(z)と書きます。その他の確率はすべてここから作られます。

  • x以上になる確率:P(X ≥ x) = 1 − Φ(z)
  • aとbの間になる確率:P(a ≤ X ≤ b) = Φ(z_b) − Φ(z_a)
  • 対称性:Φ(−z) = 1 − Φ(z)

連続分布では1点の確率が0なので、<の区別は結果に影響しません。

例題1:特定の点数以下になる確率

ある試験の点数が平均70、標準偏差10の正規分布に従うとします。

85点以下になる確率

  1. z得点:z = (85 − 70) / 10 = 1.5
  2. 累積確率:Φ(1.5) ≈ 0.9332
  3. 解釈:受験者の約93.32%が85点以下です。85点は上位約6.68%に当たります。

60点以上85点以下になる確率

  1. 60点のz得点:(60 − 70) / 10 = −1.0Φ(−1.0) ≈ 0.1587
  2. 85点のz得点:1.5Φ(1.5) ≈ 0.9332
  3. 差:0.9332 − 0.1587 ≈ 0.7745
  4. 解釈:受験者の約77.45%が60点から85点の間にいます。

55点以下になる確率

z得点は−1.5で、対称性よりΦ(−1.5) = 1 − 0.9332 ≈ 0.0668です。85点以上になる確率とちょうど同じです。

例題2:上位x%の基準点を逆算する

今度は逆に、確率から点数を求めます。「上位10%に入るには何点必要か」は、「累積確率0.90に当たる点数」を尋ねているのと同じです。

  1. 累積確率0.90に当たるz値を求めます:z = Φ⁻¹(0.90) ≈ 1.2816
  2. 元の尺度に戻します:x = μ + z × σ = 70 + 1.2816 × 10 ≈ 82.82
  3. 解釈:約82.82点以上なら上位10%です。

同じ方法で、上位5%はz ≈ 1.6449なので70 + 16.449 ≈ 86.45点です。下位x%を求めるときは、累積確率xをそのまま入れれば済みます。

基準累積確率z値点数(μ=70, σ=10)
上位25%0.75約0.6745約76.74
上位10%0.90約1.2816約82.82
上位5%0.95約1.6449約86.45
上位1%0.99約2.3263約93.26

例題3:標本平均に当てはめる

正規分布の計算は、個々の点数だけでなく標本平均にも使えます。平均70、標準偏差10の試験から無作為に25人を選んだとき、その25人の平均点が74点以上になる確率を求めてみます。

  1. 標本平均の標準偏差(標準誤差):σ / √n = 10 / √25 = 2
  2. z得点:z = (74 − 70) / 2 = 2.0
  3. 確率:1 − Φ(2.0) ≈ 0.0228

個々の学生が74点以上になる確率は1 − Φ(0.4) ≈ 0.3446とよくあることですが、25人の平均が74点以上になる確率は約2.28%とまれです。平均は個々の値よりはるかに散らばりが小さいからです。これが信頼区間と仮説検定の出発点です。

注意点

  • 正規性の仮定を確認します。 所得や待ち時間のように片側の裾が長いデータに正規分布を当てはめると、裾の確率を大きく誤ります。まずヒストグラムやQ-Qプロットで形を確認します。
  • 上限と下限があるデータ(0〜100点の試験など)は、両端で正規分布からずれることがあります。上位1%のような極端な基準を逆算するときは特に注意が必要です。
  • 母数と推定値を区別します。 μとσを標本から推定したのであれば、その推定誤差の分だけ結果も不確かになります。

このサイトの正規分布計算機に平均と標準偏差を入れると、累積確率、区間確率、逆算の値をすぐに確認できます。

まとめ

  • 正規分布は平均μと標準偏差σで決まり、z = (x − μ) / σで標準正規分布に変換できます。
  • μ ± 1σ、2σ、3σの中にそれぞれ約68.27%、95.45%、99.73%が入り、正確な95%区間は±1.96σです。
  • 平均70・標準偏差10のとき、85点以下になる確率は約0.9332、60〜85点の間になる確率は約0.7745です。
  • 25人の標本平均の標準誤差は10 / √25 = 2で、平均が74点以上になる確率は約0.0228です。
  • 上位10%の基準は70 + 1.2816 × 10 ≈ 82.82点のように、累積確率の逆関数で求めます。
  • 片側に偏ったデータには、正規分布をそのまま当てはめません。

→ 計算機ですぐに計算: 正規分布

更新日 2026-09-23