四分位数は、並べ替えたデータを4等分する境界の値です。第1四分位数Q1は下位25%、第2四分位数Q2は中央値、第3四分位数Q3は下位75%の位置です。概念は単純ですが、同じデータをExcel、R、統計の教科書で計算してみると、Q1とQ3が互いに違う値になることがよくあります。計算機が間違っているのではなく、データとデータの間の位置をどう決めるかについての約束が何通りもあるからです。
なぜ方式が何通りもあるのか
データが10個なら、「下位25%の位置」はちょうどどれか1つの値に当たるわけではありません。2.5番目あたりと言うこともできるし、3.25番目と言うこともできます。統計ソフトRはこうした定義を9種類(type 1〜9)に整理しており、広く使われている方式は次の3つです。
| 方式 | 位置の式(並べ替え後のk番目) | 代表的な使用先 |
|---|---|---|
| R type 7 | k = (n−1)p + 1 | Excel QUARTILE.INC・PERCENTILE.INC、Rの既定値、NumPyの既定値 |
| R type 6 | k = (n+1)p | Excel QUARTILE.EXC・PERCENTILE.EXC、一部の教科書・Minitab |
| テューキーのヒンジ | 中央値で半分に分けた後、それぞれの半分の中央値 | 探索的データ解析、箱ひげ図の教科書、R fivenum() |
位置kが整数でなければ、前後2つの値の間を直線で補間します。たとえばk = 3.25なら、3番目の値に(4番目の値 − 3番目の値)の0.25倍を足します。テューキーのヒンジは、nが奇数のとき中央値を両方の半分に含めるのが本来の定義です。
同じデータ、違う四分位数
次の10個の値を並べ替えておきました。
2, 4, 5, 7, 8, 10, 12, 13, 15, 25
中央値は5番目と6番目の値の平均(8+10)/2 = 9で、3つの方式すべてで同じです。違いはQ1とQ3で生じます。
type 7(Excel QUARTILE.INC)
- Q1の位置:
(10−1)×0.25 + 1 = 3.25→5 + 0.25×(7−5) = 5.5 - Q3の位置:
(10−1)×0.75 + 1 = 7.75→12 + 0.75×(13−12) = 12.75
type 6(Excel QUARTILE.EXC)
- Q1の位置:
(10+1)×0.25 = 2.75→4 + 0.75×(5−4) = 4.75 - Q3の位置:
(10+1)×0.75 = 8.25→13 + 0.25×(15−13) = 13.5
テューキーのヒンジ
- 下半分
2, 4, 5, 7, 8の中央値 →5 - 上半分
10, 12, 13, 15, 25の中央値 →13
| 方式 | Q1 | Q3 | IQR |
|---|---|---|---|
| type 7 (INC) | 5.5 | 12.75 | 7.25 |
| type 6 (EXC) | 4.75 | 13.5 | 8.75 |
| テューキーのヒンジ | 5 | 13 | 8 |
type 6は両端に少し広がった値を、type 7は内側に寄った値を返す傾向があり、テューキーのヒンジはその間に来ることが多いです。データが数百個以上あれば方式間の差はほぼ消えますが、数十個以下では結果の解釈まで変わることがあります。
IQRと1.5×IQRのフェンス
四分位範囲IQR = Q3 − Q1は、中央50%のデータが占める幅です。平均と標準偏差は極端な値に大きく左右されますが、IQRは中央の半分だけを見るので極端な値に強い指標です。
テューキーが提案した外れ値の基準は次のとおりです。
- 下側フェンス:
Q1 − 1.5 × IQR - 上側フェンス:
Q3 + 1.5 × IQR - フェンスの外側にある値を外れ値の候補として示します。
3 × IQRの外側は極端な外れ値として別に区別することもあります。
例題データの最大値25に当てはめてみます。
| 方式 | 下側フェンス | 上側フェンス | 25は外れ値か |
|---|---|---|---|
| type 7 | 5.5 − 1.5×7.25 = −5.375 | 12.75 + 1.5×7.25 = 23.625 | はい(23.625超) |
| type 6 | 4.75 − 1.5×8.75 = −8.375 | 13.5 + 1.5×8.75 = 26.625 | いいえ |
| テューキーのヒンジ | 5 − 1.5×8 = −7 | 13 + 1.5×8 = 25 | 境界値(外側ではない) |
同じ値25が、方式によって外れ値になったりならなかったりします。そのため報告書にはどの四分位数の定義を使ったかをあわせて記す必要があり、1.5×IQR基準は「取り除く値」ではなく「もう一度確認すべき値」を選ぶ道具として使うのが望ましいです。
箱ひげ図の読み方
箱ひげ図(box plot)は四分位数を図で表したものです。
- 箱:下辺がQ1、上辺がQ3です。箱の高さがそのままIQRです。
- 箱の中の線:中央値です。線が箱の片側に寄っていれば、分布は非対称です。
- ひげ(whisker):フェンスの内側にある最も遠いデータまで描きます。フェンスの値そのものまで引くのではありません。
- 点:ひげの外側にある個々の点が外れ値の候補です。
上のひげが下のひげより長く、上側に点があるなら、右に裾の長い分布(正の歪度)が疑われます。所得、滞在時間、待ち時間のように0を下回らないデータでよく見られる形です。
実務のヒント
- 他のツールと結果を合わせる必要があるなら、まずそのツールが使っている定義を確認します。Excelユーザーと比較するときは、type 7(INC)が最も無難です。
- 外れ値は原因を確認してから判断します。 入力ミス(単位の取り違え、桁の打ち間違い)なら修正し、実際に起きた極端な値なら残したうえで、中央値・IQRのような頑健な統計量をあわせて報告します。
- パーセンタイルにも同じ問題があります。 上位10%の境界(90パーセンタイル)のように、四分位数以外のパーセンタイルも同じ位置の式の選び方によって値が変わります。
- 標本が小さいときは、四分位数そのものが不安定です。データが10個前後なら、四分位数よりも元データをすべて点で示すほうが情報量が多くなります。
このサイトの記述統計計算機では、同じデータで四分位数の方式を切り替えながら、Q1・Q3・IQR・外れ値のフェンスを比較できます。
まとめ
- 四分位数の標準的な定義は1つではなく、Excelの
QUARTILE.INCはR type 7、QUARTILE.EXCはR type 6に当たります。 - 例題
2, 4, 5, 7, 8, 10, 12, 13, 15, 25のQ1・Q3は、type 7が5.5・12.75、type 6が4.75・13.5、テューキーのヒンジが5・13です。 - 外れ値のフェンスは
Q1 − 1.5×IQRとQ3 + 1.5×IQRで、方式によって同じ値が外れ値かどうかが変わることがあります。 - 箱ひげ図のひげは、フェンスの内側で最も遠いデータまで描きます。
- 報告書には四分位数の定義を明記し、外れ値は除去よりも確認の対象として扱います。